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彼岸花の意味と花言葉|あの日の畦道の記憶

秋のお彼岸の頃になると、田んぼの畦や墓地の傍らに、突然あらわれるように咲く真っ赤な花。彼岸花です。

子どもの頃、その花を摘もうとして「触ってはいけない」「家に持ち帰るものじゃない」と大人に止められた記憶をお持ちの方も、少なくないのではないでしょうか。

きれいな花なのに、どうしていけないのだろう。そう思ったまま、理由を教わらずに大人になった方も多いかもしれません。

この記事では、彼岸花の名前の由来や花言葉といった「意味」をひとつひとつ紐解きながら、あの日の畦道で交わされた言葉の背景にも触れていきます。

監修者 三須 榮光 株式会社セレブ 代表取締役
株式会社セレブ 代表取締役 三須 榮光

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彼岸花とはどんな花か

ヒガンバナ科の多年草

彼岸花は、ヒガンバナ科ヒガンバナ属の多年草です。学名は Lycoris radiata。もともとは中国大陸が原産とされ、古い時代に日本へ渡ってきたと考えられています。

日本の彼岸花のほとんどは種子をつけません。そのため、人が球根を運んで植えたことで各地に広がったと言われています。つまり、私たちが見かける彼岸花の群生は、多くの場合、誰かの手によってそこに植えられたものなのです。あの畦道の花にも、植えた人がいた。そう考えると、少し見え方が変わってきます。

葉が出る前に、花だけが咲く

彼岸花の最も不思議な特徴は、その咲き方です。ある日、地面から何の前触れもなく緑の茎がすっと伸び、その先に葉を一枚もつけないまま、赤い花だけを咲かせます。

花が終わってしばらく経つと、今度は入れ替わるように細長い葉が出てきます。そして冬のあいだ葉を茂らせ、春になると枯れてしまう。花と葉が、決して同じ時期に顔を合わせることのない植物なのです。

この性質から、彼岸花には「葉見ず花見ず(はみずはなみず)」という呼び名もあります。会うことのない者同士、という響きが、この花につきまとう独特の気配を強めているのかもしれません。

見頃の時期と花の寿命

開花は例年9月中旬から下旬にかけて。ちょうど秋のお彼岸の時期にあたります。気温の変化に反応して咲くため、年ごとの開花時期のずれが比較的少なく、「毎年、お彼岸になると咲いている」と感じられるのはこのためです。

一本の花が咲いている期間はおよそ4日から1週間ほど、群生全体で見ても2週間前後と、決して長くはありません。あっという間に咲いて、あっという間に消えていく。その儚さもまた、この花の印象を強くしています。

「彼岸花」という名前の意味・由来

秋の彼岸の頃に咲くことから

最も広く知られている由来は、そのまま「秋の彼岸の頃に咲く花」だからというものです。

お彼岸は、春分と秋分を中日とした前後7日間。仏教では、あの世(彼岸)とこの世(此岸)が最も近づく時期とされ、先立った方を供養する期間として大切にされてきました。その時期に決まって咲く花に、人々が「彼岸花」という名を与えたのは、ごく自然なことだったのでしょう。

「彼岸(あの世)」との結びつき

もう一つ、「彼岸=あの世」との結びつきを指す説もあります。墓地の周りに多く咲くこと、燃えるような赤い色、そして葉を伴わずに花だけが立つ姿。そうした要素が重なって、この世とあの世の境目に咲く花という印象を生んだと言われています。

食べると「彼岸」に至るという説

さらに、「食べると彼岸(死)に至るから」という説もあります。彼岸花の球根にはリコリンなどのアルカロイド系の有毒成分が含まれており、口にすると吐き気や下痢などを引き起こします。

「触ってはいけない」と言われた理由の一つは、ここにあります。実際には手で触れた程度で問題が起きることはまずありませんが、子どもが口に入れる危険を考えれば、大人が近づけさせなかったのは当然の判断だったのです。

もう一つの名前「曼珠沙華」の意味

彼岸花には、もう一つよく知られた名前があります。曼珠沙華(まんじゅしゃげ)です。

サンスクリット語に由来する仏教の言葉

曼珠沙華は、古代インドのサンスクリット語「manjusaka」を音写した言葉とされています。仏教の経典に登場する天上の花の名で、法華経などにその名が見られます。

「天上に咲く赤い花」という意味

経典が語る曼珠沙華は、天界に咲く赤い花です。めでたいことが起こる兆しとして天から降ってくる花、あるいはその花を見た者は自ずと悪い行いから離れられるとされる、たいへんありがたい花として描かれています。

つまり、本来の意味に立ち返れば、曼珠沙華は不吉な花ではまったくないのです。むしろ吉兆の花、天上の花でした。

同じ一つの花に、「彼岸花」という死を連想させる名と、「曼珠沙華」という天上の吉花の名が重なっている。この二重性こそが、彼岸花の意味を語るうえで最も面白いところかもしれません。

地方に伝わる彼岸花の異名

彼岸花には、日本各地で驚くほど多くの別名がつけられています。一説には、千を超える呼び名があるとも言われます。

  • 死人花(しびとばな)
  • 幽霊花(ゆうれいばな)
  • 地獄花(じごくばな)
  • 捨子花(すてごばな)
  • 剃刀花(かみそりばな)
  • 狐花(きつねばな)
  • 天蓋花(てんがいばな)
  • 葉見ず花見ず(はみずはなみず)

どこか薄暗い響きのものが目立ちますが、「天蓋花」は仏具の天蓋に見立てた呼び名で、「狐花」には民話の気配があります。

あなたの生まれた土地では、この花を何と呼んでいたでしょうか。祖父母や近所の大人が使っていた呼び名を、ふと思い出される方もいらっしゃるかもしれません。呼び名の数がそれだけ多いということは、それだけ多くの土地の暮らしに、この花が深く入り込んでいたということでもあります。

彼岸花の花言葉

彼岸花全般の花言葉

彼岸花の花言葉として一般に挙げられるのは、次のようなものです。

  • 情熱
  • 再会
  • あきらめ
  • 独立
  • 転生

「情熱」は燃えるような赤い色から。「独立」は、他の花に頼らず、葉さえ伴わずに一本で立つ姿から生まれたものでしょう。

そして「再会」と「転生」。この二つは、花と葉が決して同時には会えないという性質、そしてお彼岸に咲くという時期の重なりから生まれた言葉とされています。彼岸花の花言葉の中でも、最も静かで、最も深い響きを持つ言葉ではないでしょうか。

赤い彼岸花の花言葉

最も一般的な赤い彼岸花には、「情熱」「独立」「再会」「あきらめ」といった花言葉が当てられます。

白い彼岸花の花言葉

白い彼岸花(シロバナマンジュシャゲ)の花言葉は、「また会う日を楽しみに」「想うはあなた一人」などとされます。赤に比べて、やわらかく、待つ気持ちを含んだ言葉が並びます。

黄色い彼岸花の花言葉

黄色い彼岸花(ショウキズイセン)には、「元気な心」「陽気」「追想」といった花言葉があります。

「怖い」と言われる花言葉の背景

彼岸花の花言葉を調べると、「悲しい思い出」「諦め」といった重い言葉に出会うこともあります。こうした言葉が生まれたのは、この花が墓地に咲くこと、球根に毒を持つこと、そして「死人花」といった異名で呼ばれてきたことの積み重ねによるものです。

ただ、先ほど見たとおり、曼珠沙華という本来の名は天上の吉花を指すものでした。怖い花言葉だけを取り上げて、この花を敬遠してしまうのは、少し惜しい気がします。

なぜ墓地や田の畦に多いのか

彼岸花が墓地や畦道に多いことには、実ははっきりした理由があります。不思議な力によるものではなく、先人の生活の知恵なのです。

球根の毒が、田畑を守った

彼岸花の球根に含まれる毒は、モグラやネズミといった小動物を寄せつけません。そこで昔の人々は、田んぼの畦や土手に彼岸花を植えました。畦に穴を開けられて水が抜けてしまうのを防ぐためです。

日本の彼岸花のほとんどが種をつけず、人の手で植えられて広がったという話は、ここにつながります。あの畦道の赤い列は、米を守ろうとした人々が、何十年、何百年もかけて植え継いできたものだったのです。

墓地を守るためにも植えられた

かつて土葬が一般的だった時代、野犬やイノシシなどの獣が墓を荒らすことがありました。それを防ぐために、墓地の周囲に彼岸花を植えたと言われています。

墓地に彼岸花が多いのは、この花があの世を呼ぶからではありません。むしろその逆で、眠っている人を守るために、生きている人が植えたものだったのです。

「摘んではいけない」と言われた本当の理由

こうして見ていくと、あの日の大人たちの言葉の意味が見えてきます。

一つは、球根に毒があり、子どもが口にしたら危ないから。もう一つは、畦や墓地を守るために植えられた大切な花を、抜いたり傷めたりしてはいけないから。

「不吉だから」ではなく、「大事なものだから」だったのかもしれません。理由を教わらずに大人になったあの言葉には、そんな背景があったのです。

文豪たちが詠んだ彼岸花

この花は、多くの文人の目にも留まってきました。

北原白秋「取りて捨ちよやれ」に込められた眼差し

秋の野に あまりに真赤な 曼珠沙華 その曼珠沙華 取りて捨ちよやれ ――北原白秋

秋の野に、あまりにも赤く咲いている曼珠沙華。その花を、取って捨ててしまえ、というのです。

美しいと詠むのではなく、捨ててしまえと言う。この激しさは、花の赤があまりに強すぎて、見ていられなかったということなのでしょう。美しさが度を越すと、人は落ち着かなくなる。そんな感覚が、素朴な言葉のまま置かれています。

なお、白秋は市川市の真間にゆかりのある歌人でもあります。大正5年(1916年)、一時期この地の亀井院に身を寄せていた記録が残されています。また、白秋が同じ年に小岩町(現在の東京都江戸川区)に構えた住まい「紫烟草舎」は、のちに市川市内へ移築され、今も保存されています。白秋がこの歌を詠んだ野がどこであったかは分かりませんが、市川の秋の野にも、当時から変わらず曼珠沙華が咲いていたことでしょう。

夏目漱石「あつけらかんと道の端」の飄々とした眼

曼珠沙華 あつけらかんと 道の端 ――夏目漱石

こちらはまったく調子が違います。道の端に、あっけらかんと咲いている曼珠沙華。畏れも湿っぽさもなく、ただそこにある姿をひょいと写し取っています。

死人花と呼ばれ、畏れられてきた花を、「あつけらかんと」と評してしまう。その距離感が、かえってこの花の本当の姿を捉えているようにも思えます。

同じ花を前にして、一方は目を背けたくなるほどの赤さを見、一方は道端にただ立つ気安さを見た。彼岸花という花が、見る人の心をそのまま映してしまう花だということが、この二作からよく分かります。

彼岸花が咲く頃、思い出す人はいますか

彼岸花は、毎年ほとんど同じ時期に、ほとんど同じ場所に咲きます。

種をつけないこの花は、誰かが植えた球根から、その場所で何十年も咲き続けます。子どもの頃に見上げたあの畦道の赤い列は、もしかすると今も、同じところに咲いているかもしれません。あなたが見たのと同じ花が、あなたのお父さんやお母さんが子どもだった頃にも、そこに咲いていたかもしれないのです。

そしてこの花は奇しくもお彼岸に咲きます。先立った方を想う、その時期に。

花言葉の「再会」も「転生」も、もとはこの花の性質から生まれた言葉でしょう。けれど、毎年めぐり来るこの花を前にすると、その言葉が別の意味を帯びてくるようにも感じます。花は変わらずそこに咲き、見る人だけが年を重ねていく。そして、かつて一緒にその花を見た人が、もういない。

今年、彼岸花を見かけたら、少し足を止めてみてください。その赤い色といっしょに、誰かの顔が浮かんでくるかもしれません。

まとめ

彼岸花の意味は、「彼岸の頃に咲く花」であり、同時に「天上に咲く吉兆の花・曼珠沙華」でもありました。墓地や畦道に多いのは、この花があの世を呼ぶからではなく、田畑と眠る人を守ろうとした人々が植え継いできたからです。

死人花、幽霊花と呼ばれ、どこか畏れられてきた花ですが、その背後にあったのは先人の知恵と、大切なものを守ろうとする気持ちでした。花言葉の「再会」という言葉も、お彼岸に毎年めぐり来るこの花には、よく似合っているように思います。

お彼岸に、大切な方を想う時間を

お彼岸は、先立った方に想いを向ける時期です。お墓参りに足を運ぶ方も、遠方でなかなか行けずにいる方も、この季節になると自然とどなたかの顔を思い出されるのではないでしょうか。

セレブ葬儀社では、法要やご供養についてのご相談、そしてご自身のこれからについてのご相談を承っています。まだ何も決めていない段階でも、お話をお聞かせいただくだけで構いません。彼岸花の咲くこの時期に、大切な方とご自身のことを少し考えてみたい。そんなときは、どうぞお気軽にお声かけください。

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